2006-06-12

中田英寿の思考回路

彼は、日本有数の選手である。日本に多い技術だけの選手ではない。平均点が高い、日本人離れした選手である。
だが、彼が『日本人離れしている』と言われるのは、能力よりその極度に論理的な思考や言動の面のようだ。
私に言わせれば、彼のそうした面は日本人離れではない。人間離れしているのだ。あれだけ論理的思考に寄る人間はそういない。欧米的とも言われるが、欧米にもそういない。
彼の「ゴールから逆算するサッカー」の論理は完成しており、彼はその規範に従うチームを望む。
だが、それは諸刃の刃。実によく斬れる、諸刃の刃だ。
彼の論理に従い、中心に据えたチーム。彼は最も輝き、またチームも個々の力以上のものを得た。平塚。岡田ジャパン。ペルージャ。中田頼みと揶揄されることも多かったチームだが、彼は眩いばかりに輝き、名を馳せた。
しかし。その後移籍した数々のチームや、トゥルシエの支配の下では、輝きは影を潜めた。
ジーコジャパンでも、様相は変わらない。彼は、基本的によそ者である。彼がいなかったアジアカップで意思統一の基礎を作り上げたチームで、彼の論理は中心になりにくい。

5月30日。ドイツ戦。
高い意欲を持ち、運動量の多かった日本は、2点をリードする。
4年間で、リスクの少ない繋ぐサッカーを共有した選手達は、ペースダウンしキープ優先、を心がけた。一人、彼を除いて。
多くの試合で彼の位置に入ってきた選手達が、奪ったらまず自分に納め落ち着けるプレーを採ってきたシーンで、彼は前線のスペースに飛び出し続ける。
結果、後方の人数が不足し、高原・三都主という決して守備的でない選手が反則を犯し、失点。無理せずディレイで構わなかった。彼のカバーがあったなら。

6月4日。マルタ戦。
早々に先制点を奪ったこともあり、怪我の多いチーム事情もあり、慎重すぎて極端に運動量が少ない悪癖を出した。
彼は周囲を叱咤し、厳しいパスを出す。パスは尽くラインを割る。相手が出てこない状況もあり、全くチャンスを作れない。
後半、小野や小笠原が投入され、真中は人員過多。スペースが無い。しかし彼は、大渋滞の真中で受けるプレーを繰り返し、最後までパス成功率は上がらなかった。

良くも悪くも、ジーコジャパンは最後まで中田英寿のチームにはならなかった。
彼は駒ではない。将軍である。今は、指揮のとれない将軍。
であれば、選択肢はひとつ。なのだが。ジーコの決断は、恐らく違ったものになるだろう。

日本代表の幸運を。奇跡的な調和と融合を。心から祈る。

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