2006-09-28

歌を忘れたアホウドリ

アホーアホーと鳴くのは、アホウドリではない。
アホーと鳴くのはカラスである。
アホウドリは、地上では鈍間な鳥だ。人が近付いても逃げないし、すぐ捕まってしまう。
そして飛ぶには長い助走が要る。
ひとたび飛び立てば2日飛んだまま降りてこないと言われる鳥だが。
地上が苦手な鳥なのだ。
アホウと呼んだのは、いつだって自分勝手で、この鳥の上質の羽毛のために乱獲した人間である。

絶滅が危惧されるこの鳥の繁殖のため、精巧なデコイを作り、テープで鳴き声を流しているんだそうだ。
より繁殖に適した土地へと若鳥を誘導するためである。
目的や結果はさておき、自分達の歌を忘れ、人の作ったまがいものに操られてしまうアホウドリ。
どこか、物悲しい。

人の世も、さほど変わりは無い。まがいもので満ち満ちている。
人々は、ほんものの価値や想いより、心地良さだけを求めているし。
それを良く知っている者たちは巧妙な罠を次々に生み出している。
人々は、まがいものであることに気付いていながら、気付かないフリをして生きている。
そのほうがラクだからだ。考えないほうがラクだからだ。
そうして騙されるがままに見える人々も、裏を返せば、別のことで騙す側に回っていたりする。

いくら騙してみたところで、騙せないものはいくらでもあるのに。
神様の話などでは、ない。
アホウドリのように、滅びゆく定めにある者達の話である。

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