2007-08-17

音痴の夕べ


遠き山に 日は落ちて
星は空を ちりばめぬ
きょうのわざを なし終えて
心軽く 安らえば
風は涼し この夕べ
いざや 楽しき まどいせん
まどいせん

やみに燃えし かがり火は
炎今は 鎮まりて
眠れ安く いこえよと
さそうごとく 消えゆけば
安き御手に 守られて
いざや 楽しき 夢を見ん
夢を見ん
(『遠き山に日は落ちて』
ドヴォルザーク『新世界から』より、堀内敬三作詞)

 
ぼんやり一人車に乗っかっていると、知らないうちに歌を歌っていることがよくある。
夕焼けの時分は、特に。
昼はどちらかといえば憂鬱なほうが多い私は、朝焼けが嫌いで夕焼けが好きだ。
私にとっての夕焼けは、「一日の終わり」ではなく「夜の始まり」なのだ。
ただ、息の詰まるほど切ないドヴォルザークのこの曲が、次第に重荷になってくる。
聖歌のように偉ぶった言葉遣いの割に中身は能天気な堀内の詞は割と好きなのだが。曲とのミスマッチがどうにも気になってくるのだ。
そもそも、曲が気分に合っていないんだな。思い直し、歌を変える。

夕焼け小焼けで 日が暮れて
山のお寺の 鐘が鳴る
お手々つないで みな帰ろう
からすといっしょに かえりましょ

子供が帰った 後からは
まるい大きな お月さま
小鳥が夢を 見るころは
空にはきらきら 金の星
(『夕焼け小焼け』
中村雨紅作詞 草川信作曲)

 
少しかすれた小声で歌っていると、実に気分がいい。
多分、私の音痴が誤魔化されるからだろう。
正面に夕陽が見えるように車を止め、シートを少し倒し。
頭の後ろで腕組みして、もう歌わない。
最後の光が真っ赤に輝きながら消えるまで、ぼんやり眺めている。

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