2007-09-02

青い夜

外へ出る。
家の裏の小さな林のほうで、コオロギたちがギリギリと鳴いている。
空には、低く薄い雲の天蓋。月明かりに照らされてか、うっすら青く光っている。
静かな、青い、青い夜。
たまたま青いスニーカーと青いジャージだった私は、夜の一員になったようで、少し浮かれていた。
 
タバコが無いのだ。400mほど先の、橙色のコンビニに行くつもりだった。
出た途端、青い夜である。
車に乗るつもりだったが、そのまま歩きだした。
夜空を見上げたまま、ふらふらと地に足がついていない。
つきあたり。
右に、すぐ近くにもう橙が見えている。
左には、もう一つ曲がって歩いていけば青いコンビニがある。
あまり迷うこともなく、左に向かう。
かつら、くつら、自分の足音が大きく聞こえる。
虫の音と、靴の音。落ち着きなくきょろきょろ周りを見渡しながら、歩いてゆく青い私。
見慣れた街を、初めて来た人のように物珍しげに歩いていった。
 
青いコンビニでは、青い店員がつまらなそうに床を磨いていた。
そんなもんだよな。
そう思いつつ、それでも、と最後まで青いタバコにしようかと迷いながら、結局いつもの赤いタバコを買った。
店を出る。
バチリと大きな音。
見上げると、青い誘蛾灯に真っ青な蛾がへばりつき悶え苦しんでいた。
すっかり苦々しい思いで、赤い箱から白い紙のタバコを取り出し、赤い火をつける。
そのまま下ばかり見て、白い煙を鼻から吹きながら足早に帰った。
ドアに手をかける前に、見上げた空はやはり青かった。

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