2006-08-12

土いじり


私の数少ない趣味のひとつに、土いじりがある。
と言っても、ガーデニングや家庭菜園のような、普通土いじりと聞いて連想されるようなものではない。
私は、苗木を育てているのである。
それも、庭木や盆栽、観葉植物や果樹でもない。
私は、普通に山に生えている、しかも林業屋でもわざわざ育てようとはされない木々を、種から育てているのである。
ケヤマハンノキ。オノエヤナギ。ミズナラ。アカエゾマツ。シラカバ。ハルニレ。アオダモ。カツラ。
造園で多少使われることはあっても、およそ人の社会に直接利益をもたらすことはない木々。それを、私は育てている。
そうして、ある程度大きくなったら、山へ植えに行くのだ。
ゴルフ場跡。耕作放棄地。河畔林の復元。過伐採による風害地の防風砂防林。それらに、私の苗木は使われている。
何のために?と言われれば、偉そうな理屈をこねることはできる。
が。あまりそういう気にはなれない。
楽しいから。やっている直接の理由は、それに尽きるからだ。

西洋の文明は、自然を征服して発達した。
木を薙ぎ倒し、川を堰止め、山を切り崩し。そうやって、世界の中心として君臨し得る文明を築いた。
日本もまた、明治よりその流れに乗って発展した。この狭い国土に1億以上もの人が暮らせるほどに、自然を食い潰した。
だが、それ以前の日本は、決してそういう国ではなかった。
山。海。森。そういう、人間にとって住みにくい所は、神が住むところだった。
ほこらを建て、周りの木を切ったりはせず。祈りを捧げる対象だった。
人々は自然に生かされていることを実感しながら生きてきたのである。
そうした伝統的習俗は、上っ面だけ繕ったところで、変わるものではない。
私達の意識しないようなところにまで入り込み、根強く残っているものなのだ。
現に、何ら実感として得になることがない私の趣味には。言葉には尽くしがたい楽しさを感じる。

暇を持て余している人達。
ちょっと、木を育ててごらんなさい。
やってみれば、わかります。やらなければ、一生わかりませんよ。

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