或る詐欺師の話
ある、北海道で最も有名な脚本家が、富良野の潰れたゴルフ場を利用して自然再生・環境学習に取り組んでいる。
さすが脚本家だけあって、演出術には長けている。
地球46億年の道。ほう。50年かけて15万本植樹。ふうん。自作の戯曲の一部を抜粋した石碑。立派ですね。
決して安くはない体験学習料をとっているが。なかなかに繁盛しているようである。
繁盛。そう、この事業は、商売の臭いが鼻につく。うさんくさいのである。
まずスタッフに専門家が一人としていない。全ては彼の劇団員とOBで運営されている。
そして、脚本家自身の理解があまりに中途半端である。しかも、非常に耳障りのいい言葉を並べる。詐欺師の手口だ。
沢山ある。スペースが足りない。ごく一例。
植樹した木が鹿の食害に遭い、スタッフが困惑していると、こう言ったそうだ。
「もともとは彼ら(鹿たち)のものだから、戻ってきてくれるということはそれでいい。どうぞ食べてくれ。また植えるから」
一見、非常に美しい感性であるが。実態をわかっていない。全く。
戻ってきてくれた。ここだ。
鹿は天然記念物か何かだとでも思っているのだろうか。
エゾシカ食害は、今北海道全体で問題になっている。樹木だけでなく、牧草地や農地。市街地にまで被害は及んでいる。
何故か。狼が絶滅したからだ。
大型の草食獣である鹿は、元々食料因による個体数の変動が少ない。しかも、天敵である狼が絶滅。唯一だった繁殖の阻害要因が無くなった。
かくて増えに増えた鹿達は、野山を食い荒らし、のみならずヒトの世界にまで降り始めた、というわけだ。
勿論悪いのは狼を絶滅させたヒトだ。鹿は悪くない。だが、今は鹿の存在がさらなる環境破壊の因子になってしまってもいるのである。
これは、何ら特殊な専門知識ではない。ちょっと環境に興味がある人は誰だって知ってる。新聞にだって取り上げられている。
そして、幼苗食害による天然更新の阻害が、活力の無い森に繋がり、ひいては平成16年台風18号による甚大な規模の風倒被害の要因の一つともなったとすら言われている。
木を植えるなら、鹿対策を考えるのは今や常識なのである。
また植えるから?何の対策も無く、鹿の餌だけを増やすつもりか?
知識も関心も無いのが見え透ける。
環境問題は、キレイ事にされがちだ。だが、キレイ事だけで金を取るなら、それは詐欺師だ。
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