もの書き
朝から3時間ほど車で走り回り、余市の手前の海岸のコンビニで昼食中である。いつもここに寄る。
なかなかに明媚なところなのだ。さほど風がない今日のような日も、波が高い。
そのせいか、サーファーの聖地でもあるらしく、このクソ寒いのに2・3人ボードに寝そべっている。
ここまで書いて、いやになり始めた。目の前のこの美しい景色を表す言葉を、私は持たない。
私に書けるのは、いつだって私の頭の中身だけなのである。
高校3年春の進路相談。
配られた用紙に、進学先とは別に将来の就業希望を書く欄があった。
私は、四文字「もの書き」とだけ書いた。理由も書けとあったが、面倒なので書かなかった。
数日後、その用紙をもとに個人面談があった。担任は、志望校と現在の学力の話を一通り終えてから、困った顔をした。
担「で、これは、何だ?」
三「もの書きですけど。」
担「うん、で、具体的に何か無いのか。」
三「え、無いですね。」
担「例えば作家とか、記者とか、ライターと」
三「無いです。書くなら何でもいいです。」
担「そうか・・・お前本とか読むのか?」
三「読みますよ。マンガから純文学まで。」
担「マンガってお前・・・山本周五郎とか読むか?」
三「いえ読みません。」
担「うん、まあそのうち読んでみなさい。じゃあ次呼んできてくれ」
「マンガ」に脊髄反射して、担任は私をバカにしたようだった。
しかし、その頃プウシキンや安倍公房を読んでいた私だって、彼をバカにしていた。
小さい頃から、作文は私のテリトリーだった話はここにも書いた。
国語は何の勉強をせずとも満点近かった私は、ごく当たり前のように書く人になると思っていた。
何を書いたわけでもないのに。傲慢にそう言い触らしてすらいた。
変わったのは、秋に学祭でバンドをやってからだ。
叫ばなければやりきれない思いを、表現する難しさに直面した。怯えた。
才能を試そうとせずに、私は逃げていた。
大学の論文。これも、手抜きだらけでもいつも優だった。
書く技術には、過信をしていた。ずっとそうだ。だからこそ、白日に晒しプライドに傷をつけるのを恐れていた。
書きたいことは、あった。常にあった。いくらでもあったのだ。
無かったのは、突き詰める勇気だった。
逃げっぱなしで既に12年である。このHPだって、最初はあった書き物をすぐ消してしまった。
また変わったのは、今の仕事だ。営業用の技術論とはいえ。書いた文章を、人前に出さなくてはならなくなった。
恥ずかしいものを出したくない、と強く強く思うようになった。何度も何度も推敲を繰り返した。
納得いかなくとも、期日には出さなければならない。小さな達成感と後悔を積み重ねた。
発表するにつれ、技術を思い出し。それと同時に書きたいものは他にあるのを痛感した。
それで始めたのが、このブログとMyFavoriteなのである。
やはり、納得はいかない。
下手クソだとしか思えないのだ。
だが、今の私はそれを載せておける。構わぬ。うまくないのが私の文章だ。
書かなければうまくはならん。書かなければならん。と思う。
傑作の幻影に怯え、逃げた私はもういない。はずだ。
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