2006-10-30

また来るぜ、函館

月曜日ほど面倒な曜日もない。また退屈な日常の始まりだ。
まだ、暫くは昨日の中にいたい。そう思いながら仕事をすることになる。

仕事の用件は午前中で済んだ。取引先のぜひ昼食を、との誘いは固辞した。
そもそも温泉宿のボリューム満点の朝食をおかわりした私は、メシを食う気になれなかった。
天気予報の雨は夜中で終わったようだ。昨日に引き続き快晴である。私の能力はたいしたもんだ。
また一人旅。目指すは、啄木ゆかりの地、立待岬である。

海岸線の道は、私が一人暮らしを始めた白老の町にどこか似ていた。違うのは建物の多さ。
アヨロの奇岩を思い出しながら漁師町を抜け、啄木の墓に止まらず一礼する。
もう、すぐそこだ。

失敗した、と思った。夜景は函館山よりこちらのほうが美しかったのではないだろうか。
夜景といえば判で押したように高台からの見晴らしと決まっているが、海越しに眺める街並みはまた別の趣がある。
この街のような、山裾まで街が広がる所は尚更だ。
次回。次回。

反対側は更なる絶景であった。傍にいたヤンキーくせえお姉ちゃんですら「人間なんてちっぽけだよね」なんて呟いている。
やはり、あまりに美しいものは人を寄せ付け難いものなのか。人が少ないのが、またよかった。
下北半島が遠くに霞んでいる。本州はすぐそこだ。
逆波揺れる海岸の向こう。何だか切なくなったので移動することにした。




元町の金森倉庫。レンガの街並みが美しいと聞いていた。また、そろそろ腹が減っていた。
ノスタルジックに浸りながらうまい海産物を、なんてな期待は、それでも駐車してすぐまでは残っていたのだが。


台無しである。
何故車を入れるのか。何故駐禁がないのか。理解不能である。
しかも、レンガの中はあまりに通俗な土産屋行列だ。海産物も、高い。観光相手の値段である。
これは、いかん。
函館が嫌いになりそうだった。素早く五稜郭へ向かうことにした。


たまたま入った向かいの寿司屋。寿司屋?寿司屋ですよね?
何ですか?このお洒落な空間・・・
しかも客は私一人。おまけに私は勿論作業服だ。
メシはうまかったが、すっかりしょげた。


傷心のままに店を出た。15分ぐらいしかいなかったのではなかろうか。
たまにはゆっくり楽しみたかったのだが。仕事の合間と何ら変わらなかった。

しかし。外へ出れば。五稜郭は周りも美しい。
芸術ホールや北洋資料館の周囲をぶらぶら歩き回るだけで、先程までの落胆は影もなくなった。
まちづくりも、誰が主導するかでかなり変わってくる。ゼニを優先しようとする者には、安らぎや美しさは作れない。
公共事業にもいろいろある。採算だけでは語れぬものがある。

外郭沿いをぐるりと回ってみることにした。
もはや、何も語るまい。





ずっとここにいたい。
仕事でなければ、3日ぐらいここだけを楽しみたいぐらいだ。
堀沿いはぐるりと桜だ。桜の時期にタワーに上れば、桜色の五稜は一輪の花のように見えるだろう。
堀の睡蓮が咲く時期には、水面にいくつにも映ることだろう。
雪が枝々に積もれば。
夏の高い日差しが真上から降り注いだなら。
ここに、住みたい。
年中いたい。
そんなことすら考えた。

しかし。帰らねばならぬ。また4時間かかるのだ。明日も仕事がある。


薄暮の噴火湾は、また美しかった。それに救われた。


また来るぜ。
待ってろよ、函館。
 
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