思考停止の結果(具体例)
考えればわかることなのに、考えずに聞いて騙される。
全ての詐欺は、この構造を持つ。
それに社会の大半が騙された例。郵政解散時のコイズミの詭弁である。
「役人でなければできない、公務員でなければ公共的な大事なサービスは維持できない、それこそまさに官尊民卑の思想です。私は民間人に失礼だと思います。」
こういうのを、論理のすり替えと言う。
郵政を「誰がやるか」でなく、「何をどうやるか」が問題なのに。
国が利益度外視の公共事業としてやるのか、民間が利益追求事業としてやるのか、という問題を、
「役人」か「民間人」か、という小さくわかりやすい全体の話にすり替えている。
多くの市民は、「役人」にぼんやりと不満を感じている。その先入観が、騙された要因だ。
その先入観に、「民間人」という対立軸を用意し、「官尊民卑」と強い言葉で煽り思考を停止させる。
聞く者は、「民間人」を「自分」に置き換える。
自分達は必死に働いてるのに、役人はロクに仕事もしねえで高い給料で偉そうに、そうだその通り!
なんて思ったら思うツボだ。
じゃあ公共事業は全部民営化するのか?
年金や国保も、道路も堤防も水道も、洪水でも地震でも噴火でも、民間が儲け目指して頑張って、てか?
警察も裁判所も自衛隊も、全部民間が金もらってやるんだな?
誰が金を払うんだ?金を払えない人は見捨てるのか?
そもそもアンタも総理大臣として税金から安くない給料もらってるはずだが。
総理大臣とか民間でも出来るから返してね。自分で「民間として」誰かにもらってよ。
あと官邸の家賃払ってね。あの豪邸だから、月300万ぐらいかな。もっとかな。
できない、なんて言わないよね?いや、そんなアンタに「失礼」なことは思ってないよ。
と言えば、「それは極論だ、全部なんて言っていない」と言いのがれるのだろう。
そう、限定していないがミソなのだ。郵便職員といえば反感を食う。だから「役人」とぼかしたのだ。
役人=悪、の図式を、聞く人そのものを対立軸に持ち出すことで強く印象付け。
郵便局は役人に含まれる→郵便局=悪、という結論へ導く。
例証を用いず、具体的に言わず、意図を結実させる。
狡猾な手口である。
「これができないで、どんな公務員削減ができるんでしょうか。どういう行政改革ができるんでしょうか。」
こういうのを、論理の飛躍という。
郵政民営化と公務員全体の削減や行政改革に、いったいどんな相関関係があるのか。
それを例示しなければ述べられぬ論理であろう。
普通に考えても、郵政民営化をしなくとも窓際職員を片っ端からリストラすれば公務員は減る。
例えば無駄な公共事業をしまくっている国交省を変える事と、郵政民営化はどう考えても関係無い。
唯一、関係がありそうなのは、かなりの数がいる「郵政族議員」の力を削げること。
それが族議員全体の体力低下に繋がり、行革が進めやすくなる、かもしれないということだけだ。
ならそう言えばいい。結局、極端なことを喚いて強いインパクトを与えたいだけなのだ。
実態は。何も言っていないのと一緒だ。
「はっきりと改革政党になった自民党が、民営化に反対の民主党と闘って、国民はどういう審判を下すか聞いてみたいと思います。だから解散をしました。」
こういうのを、湾曲という。
郵政民営化法案に反対したものを党から弾き飛ばし(たのはこの発言の後だが)、純潔な改革政党であることをアピールするが。
案の内容についての議論もロクに受けず、イヤなら出て行け、と突っぱねる姿勢は、どちらかといえば独裁政党に近い。
そして民主党も自民党内の造反議員も、民営化自体は賛成の者がいた。反対したのは政府の法案に対してであって、民営化に対してではなかったのだ。
つまり、本来は「民営化」に賛成か反対か、という対立軸ではなく、「コイズミ版民営化法案」に賛成か反対かという対立軸だったのだ。
だが、そうは言わない。話を絞り、対立意見を捻じ曲げる。
何故か。わかりやすいからだ。
賛成か反対か、なら、賛成を集めるのは簡単だ。
案の議論になれば国民はついてこない。選挙前の世論調査では、年金問題が最大の関心事だったからだ。
選挙の結果には、私は何も言わない。国がどちらを向こうと、それは国民が選んだ方向だ。
だが、コイズミが5年間、あのニヤけた面で、何を言っていたのかはわかっておいたほうがいい。
馬鹿に騙されたら、騙されたほうが馬鹿なんですよ。
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