2006-10-07

変化球内野手

小学生の頃のことだ。キャッチボールが、好きでなかった。
お互いに相手の捕りやすい球を、と投げ合う練習に何の利点があるんだろうか、と常に疑問だった。
試合では、そんなシチュエーションは一つとして存在しない。
それが練習になるわけがない、といつも思った。
言われたままのことで満足できないのは、昔からなのかもしれない。
仕方がないから、補球から返球までの動作をいかに早くするかだとか、捕球の体勢を微妙に動かして、など自分なりに考えた。
だが、投げるとなったら、相手の胸元構えた位置を狙う以外無い。
ということは、相手はいつも言われたままに普通に捕り普通に投げ返してくる、ということだ。
面白くなかった。実に面白くなかった。
ひねくれた性格も、昔かららしい。

ピッチャーでもないのに、カーブの練習を始めた。
キャッチボールの相手が少しでも捕りにくいよう、それが一番の動機だったかもしれない。
だが、どうしても曲がってくれなかった。曲げようとすればするほど、曲がってくれなかった。
諦めざるを得なかった。二塁手がカーブを投げる意味は、もともとないのだ。

だが、カーブの練習をしているうちに、思わぬ副産物があった。
投げるフォームが、微妙にスリークォーター気味になってきていたのだ。
普通に投げてもシュート気味に回転し、手元で微妙にブレる。
思わずニヤニヤした。いい意味ではなく、うれしかった。
6年後にそれで痛い目にあうことになるとは、思いもしなかった。

高校3年の球技大会。ソフトボール。
野球経験者が少なかった我がクラスのチーム。私はちょっと目立つ存在だった。
あまり運動で目立った経験の無い私は、少し、いやかなり有頂天だった。
満塁ホームランも放ち、野球部主力4人を擁するチームをあと一歩まで追い詰めていた。
ショートを守る私へ早いゴロが来た。逆シングルで捕球し、振り向きざまに送球する。
ファーストミット目がけて、ピタリ送球できた。はずが。
ボールは点々とファールグラウンドを転がっていた。
手元で微妙にシュートした球を、野球経験ゼロのでぶっちょ君がパスボールしてしまったのだ。

何事も、素直にまっすぐが一番だという、そんな話である。

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