2007-06-03

はるばる来たぜ旭川

旭川市、人口約35万人。札幌に次ぐ道内第二の都市であり、道北圏の要衝である。
旭川も、同じ道内ながら、やっぱり私の家からならはるばる、である。高速を通れなければ、200km近くある。
例の金にならない出張の件なので、高速代なぞ当然のように出ない。
それでも気合が入っていたのには、理由がある。私にとっての旭川とは、第二の故郷とも呼ぶべき場所なのだ。
住んでいたのは、小2~小6の6月まで。4年とちょっとしかない。その期間の短さゆえに、第二とせざるを得ないのだが。
何せ生まれてこのかた既に6度転居、7箇所に住んだ経験のある私である。幼少期だけでも4箇所だ。
なかでも。私にとって最も多感だった時期、私の基盤が作られていった街は、この旭川なのだ。
気合も入ろうというものであろう。
 
ルートは。本通りの国道12号線は、なるべく使いたくない。交通量も信号数も、長距離運転の場合は無ければ無いほど良い。すぐにバテが目に来る。
であれば、残るルートは大きくは2つ。国道234号から栗山で道道三笠栗山線に入り、桂沢湖から芦別まで国道452号、芦別から道道旭川芦別線を抜けるのか。
または、農道から社台ファームの横を抜け、国道274号、夕張の基点から国道452号、芦別からは以下同文、か。
どちらも好きな道なので、迷うのだが。今回は、しばらく通っていない夕張ルートを選ぶことにした。

携帯用のホームページにちらっと書いたことがあるが。とにかく、この道は美しい。
この時期は特に桂沢湖。雪解けの水の勢いが弱まり、風も無い。青く濁りがちなこの湖に、珍しく緑陰がかかる時期なのだ。
夕張の「時代に取り残された街」を抜けた後なので、その景色がより目に染みた。
ふと、脈絡無く、私の思う「アルプスの少女ハイジ」のテーマが、頭をよぎった。
あれは、単に人情話なんかじゃ、ない。都会文化と本当の豊かさ、というのが真のテーマだと思っている。
 
そんなこんなで、芦別から新城峠と美瑛を思わせるようなパッチワークの丘を抜けたら。
いよいよ、旭川市内。国道12号の神居古譚付近に出る。
特に札幌・室蘭方面の、煽り割り込み当たり前の荒くれドライビングに慣れたドライバーは、旭川に入ったら気をつけたほうがいい。
そもそもが狭い盆地で、さほどスピードを要求されずに生きている旭川のドライバー、しかも冬の-30℃の極凍結路面に慣れきったドライバー達は、こっちからすると異常なぐらいの安全運転をする。
どう見たって2台横並びでかわせる停車車両も、当然のように一時停止。
右折車がいれば後ろできちんと止まり、右折していなくなるまで決して動かない。
黄信号を突破するなんて論外、急ブレーキを踏んででも停止線で止まってみせる。
その割に死亡事故は少なくないらしいが。このセーフティドライブにしびれを切らした他地方のドライバーが起こす事故が多いのではないか。
時間に余裕を持って出てきた私は、イライラしたりなんかしない。市街まで8kmの標識から、25分ほどかかってしまったが。平気の平左である。
そもそもが、金になる仕事ではないので、気楽だった、というのももちろんあるが。
何より。何より。ワクワクしていたのだ。ユーカラ織工芸館の美しいシルエットが見えただけで、一人興奮していたのだ。
私は、この街を愛している。
冬は-30℃、夏は35度という気象条件も、眼中に無い。
私は、この街を愛している。
一番の故郷とは言い難くなってしまったが。それでも、一番好きな街は。旭川なのである。
 
発表会は、まず順当な結果だった。
こつこつ努力してきた人達がいる。ちょちょいのちょいとやって持ってきた私が、褒められちゃあいけない。
それでも、まずまず準備の分の力は出し切れたので、私としては満足の部類だった。
 夜は、恒例の交流会なのだが。発表会から、若干の時間的余裕があった。
余裕があれば、10分でも5分でも、どうしても行きたい場所があった。
ホテルのチェックインももどかしく、駆け出した。
私が街を走る、という姿は、大変貴重である。最近は年一回走ればいいほうだ。車があると、どうしてもそうなる。
それでも、走った。少しでも時間が欲しかった。
どうしても、常盤公園に行きたかったのである。
 
常盤公園に続く緑道へ出た。もうこの道からして、懐かしい。美しい。
一人バスに乗り。金が無いのでかなり手前で降り。この道を歩いて、小銭を握り締めて。お祭りに向かったのだ。
6年生だったような気がしていたが、よく考えると時期が合わない。5年生だったようだ。
あの胸の高鳴りと。一人の不安と。一人で街に出るのが好きな子だったが、お祭りはやっぱり不安だった。
あの日のこの道と、今日のこの道。歩く私は、やっぱり少しも変わっていないようだった。
 




懐かしい。懐かしい。あの日と、何一つ変わっていない。
あの樹も。あの池も。あの噴水も。あの売店も。
ここより美しい公園を、私は知らない。それぐらい、特別な存在なのだ。
あの売店で、今やどこにもないであろう「カレーアイス」を食べたのだ。バニラアイスに、チョコなのか別の何かなのか、とにかく黄色いアイスをかけた一品である。
ここ以外では見たことが無い。確かめに行く時間は、今日は残念ながら無いが。
それぐらい、とてつもなく細かいところまで、物凄い速さで思い出がフラッシュバックしていく。
死ぬ時にみる走馬灯ってのは、こんなものかもしれないな、なんて下らない事を考える。
なにはともあれ、今日は既に時間が無い。明日は、必ず。胸に誓う。
 
交流会は、酒が特段好きでない私には、大抵は面倒なだけのイベントだが。
この日は、違った。最初から、圧倒的に違った。
付近の高校の、ブラスバンドの演奏があったのだ。これが、素晴らしかった。
最近の子供は、なにかと肩身が狭い。学力が落ちただの、凶悪事件が増えただの。
そんなこたぁ、無い。子供たちはいつだって、一生懸命で誠実だ。
悪いことにしているのは、誰だ。大人じゃあないのか。
メディアは、悪い事件しか取り上げない。いいことにはインパクトが欠けるからだ。こうした、素晴らしい情熱と能力あふれる子供たちは、語られない。
大人はいつだって、保身に汲々とする。寿命が延びれば延びるほど、下からの突き上げに晒される。
だから、叩くのだ。弱いのをいいことに、絞るのだ。全ては、自分の既得権益を守りたい、それだけのことなのだ。
それが証拠に、全ての親は、うちの子に限って、と言う。関係ない弱者になんか、興味が無い。
叩かれていれば、いい気味だと嘲笑う。だから言ったろう、なんて、先輩風吹かせて上から説教する。
説教が必要なのは、どっちだ。
子供は、輝いている。腐っているのは、大人の方だ。
 
酔いつぶれたお馬鹿さんがいた。
助ける義理も何も無いのだが。何せ、肩に担がれたまま、熟睡している。こいつがまた、身長185cm体重105kgもありやがるのだ。
男手は、ある。やらざるを得ないではないか。
1km進むのに、1時間かかった。ブログにネタを提供してくれているわけでもあるまいに、どうも最近の泊まり出張には、こういうミソが一つはつく。
それでも、まあ、いい。いい運動だ。何より、夜も美しい旭川の街を、存分に散歩することが出来た。


明日も朝から用件は残るが。
絶対に、逃げる。行きたい所は、山ほどあるのだ。誰より私が多いのだ。
一人でなければ、こうは行かない。絶対に、回りきってみせる。
 
テーマページへ | 次の記事へ

No comments:

↑ このブログがお楽しみ頂けたら押して下さい。ただの「拍手」です。