2006-06-05

俺にカレーを食わせろ

幼い頃から、カレーに目がなかった。

母がたまに、問い掛ける。
「今日の晩御飯なんにs」
「カレー!!」
即答である。むしろ、最後まで言わせない。
それを1584回ぐらい繰り返し、流石に呆れて聞かれなくなった。

20年ぐらい前。よく行くカレー屋があった。当時流行りの、辛さ何段階とか指定して注文する店である。30段階あったが、5番で既に市販の辛口ルーより2倍は辛かった。
それでも、父が必ず5番を頼むのに対抗意識を燃やし、7番を注文しては椅子の上で悶絶するのである。
食後に出されるウエハース菓子が、また幸せだった。

小学校の頃だったと思う。テレビドラマで、誰かが食っていた、シャバシャバの下町カレー。強烈に憧れて、自分で作る、と言いだした。
カレー粉を炒め、具はシンプルに玉ねぎと人参と豚肉。隠し味に醤油とソース。だしをとった記憶が無い。
さあどうぞ。結構な自信で、皆に振舞った。
そこは家族だ。皆、おいしいねと言いながら、1杯は食べた。おかわりは誰もしなかった。
私は一人、悔し涙にくれながら、残り全部平らげた。

中学2年の宿泊研修。夕張のユースホステルで、変なハムカツカレーが出た。味もルーも、おまけにハムも極めて薄く、マズイの大合唱。
私は、カレーというだけで満足だった。旨いとは思わなかったが、沢山食べたかった。学年240人中一番でおかわりし、4杯食べた。普段、決して大食でない私を知る先生や友人は、気でも狂ったかと心配げに見つめていた。

我が家のカレーの日。母は大変だ。五合炊きの炊飯器目一杯炊いても、一人で半分近く消費する奴が居る。結局、夜中に翌日の弁当分を炊き直さなければならない。

札幌の大学に入った頃。巷は現在のスープカレーブームの黎明期だった。マジックスパイスが知られはじめたのもこの頃。
既にその3年は前にデリーのカレーに出会っていた私は、ブームの店には興味が無かった。そんな店より、近所のそば屋のカレー丼のほうが旨いと力説した。実際、和風だしに片栗粉でとろみをつけたそのカレー丼は、『本日のスープカレーのスープ』などとは比べ物にならないぐらい旨いと思う。

いつからだろう。夕飯何にする、と聞かれても、まずカレーとは答えなくなった。深夜にふらっとココイチに行くこともなくなった。
それでも、行列のできるラーメン屋に入って、カツカレーを注文したりするところは、相変わらずである。

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