七夕の夜
今日は七夕。
北海道の七夕は、8月7日に行なう。謂われは、知らない。旧暦に近い日付でわかりやすくとか、そんなもんだろう。
仙台七夕と同じである。北海道には、伊達藩からの入植者が多く、伊達市以外にもちらほらゆかりの地名がある。そんなところにも由来があるのかもしれない。
私が小さい頃。七夕といえば、短冊よりも笹の葉よりも天の川よりも『ろうそく出せ』だった。
ろうそく出せ 出せよ
出さぬと かっちゃくぞ
おまけに くいつくぞ
【かっちゃく】は、【引っ掻く】の方言である。
このちょっとばかり物騒な唄を唄いながら、子供達が連れ立って夜の街を練り歩き、近所の家々からろうそくと、たまに菓子やなんかも巻き上げるのだ。やはり、謂われは知らない。
北海道は、開拓地である。
伝統、風習。それぞれが違う環境から寄り集まり、切り開かれた。
だから、他の各地では当たり前のように同じようにこなされていく年間行事が、家によってまるでやり方が違ったり、そもそもあったりなかったりする。
『ろうそく出せ』は、そんな中で数少ない風習らしい風習だった。意味なんか誰も知らない。だが、粛々と毎年行なわれていたのである。
行なわれていた。そう、ここ15年は、懐かしいあの唄を聞いていない。
もっとも、私が新興住宅地に引っ越したせいもあるだろう。引っ越して2年ぐらいは聞こえた気もするが、やはり歴史の無い街は駄目だ。続かない。
滅多に夜歩きできない子供達は、子供だけで出ていることに異様に興奮し、また多少の恐怖感もあって、大声を張り上げる。
大人達は微笑ましく迎え、すこし奮発して準備しておく。自分の家の子供も抱えきれないほどもらってくるから、元はとれるのだ。
それは、楽しい夜だった。
喧騒の後のしずかな、しずかな夜が。またよかった。
今は。聞こえてくるのは虫の声だけの、静かな田舎に住んでいるが。
やはり、あの夜ほど静かだとは思えなくなった。
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