2006-11-25

【作品群】テーマ・野晒しの悲哀

彼は、生まれた時からひとりだった。照りつける日差しに、やがて消えゆく自らの運命を呪った。

既に知っていたのだ。やや離れて佇む、彼の存在を。
もはや、原型をとどめぬほどに潰れ痩せ細り、消えなんとするその姿を。
やがては、自分も。
これからの広がりよりも先に、その最期の狭まりを見せ付けられた彼には、今を楽しむことなどできようもなかった。

「しけた面してんじゃねえよ。見な。俺の腕を。俺たちを自分勝手に振り落として、悠々と浮かんでやがるあの雲とかいう野郎なら、俺がふん掴まえてけちょんけちょんにしてやらぁ。」
威勢がいい奴だ。何にも知らないくせに。

その腕より、その腕を落とした木々より、遥かに、遥かに空は高い。
ご自分の腕がご自慢なだけで、何にも見えちゃあ、いないのさ。

 
 
近寄ろうともせずそう呟くと、彼は目を閉じた。
そのまま身動きもせず、眠っているようなその姿のままで、最期を迎えるつもりらしかった。

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