手のひらの感覚
自分の体で、どこが一番好きですか?
自分を動物に例えると?と並んで、答えにくい質問ワースト1を争う質問だ。
毎回のように聞かれているグラビアアイドルの皆さんは大変であろう。
ただ、胸だの尻だのうなじだの言わせたいのが見え透けているから、まだマシかも知れないが。
普通に、真顔で、聞かれたら。困りながら、私は、
「手」
と答えたことがある。
あんまり男らしくない手だ、とよく言われる。
体の割に、指が細く長い。
高校の頃、彼女の薬指に買った11号の指輪が、私の指でも入って、理不尽な不機嫌を被ったことがある。
掌が小さいのに指が長いから、余計に細く見えるらしい。
丸まった深爪でなければもっとよかったかな、とは思うが。
手は、気に入らぬ部位が多い自分の体躯の中では、数少ない好きなところかも知れない。
子供の頃、よく『借金取り』というトランプゲームをした。
カードに、ババが2000円、エースが1000円、絵札が500円、平札が100円という値段を設定する。
各々に5枚ずつカードを配る。それが最初の資金になる。
残りのカードは場に裏返しで広げ、順番に一枚ずつめくる。
めくった人は、出たカードの金額と同じ額を全員から徴収する。
高いカードを引き続ければさらに儲かり、平札ばかりならあっという間に借金生活、という、運だけのわりにシビアなゲームだ。
これが、私は無敵だった。
わかるのだ。
裏返しのカードの上に、触れるか触れないかぐらいに手をかざす。
カードによって、下から感じる熱が違うのだ。
次から次へ絵札を引き当てる私は、よほどの幸運が他の誰かに訪れぬ限り、負けなかった。
なぜわかったのか。
その頃は、絵札やババ、スペードのエースは、印刷されている図柄が多い。だから光で熱を持つ。それを感じるんだ、と思っていた。
今になって考えてみたら、そんなはずはない。
カードは殆どの時間、裏返っているか重なっている。
それに熱なら、蛍光灯の光より、親が配る前に切った時や場に広げた時の体温のほうが影響が強いはずだ。
未だによくわからんが、手をかざした時のほんわりと暖かい感覚だけは、今も掌にありありと残っている。
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