2006-08-15

奇跡、では、ない

試合後。打ち拉がれ泣きじゃくる青森山田の選手達に対し。
駒大苫小牧の選手は、サヨナラの興奮もそこそこに、涼しい顔をして引き上げてきた。
断じて、奇跡ではない。それは必然の勝利だった。

駒大苫小牧の先発は、エース田中ではなく、支部予選でも登板のなかった岡田だった。
試合後、香田監督は「田中は緒戦の疲れが予想以上で」などとうそぶいたが、恐らくは組み合わせ発表以来の予定の行動だろう。
最大5試合戦っていく中で、全ての試合を田中では、さすがに保たない。どこかで休ませる必要がある。
そして、次戦は再度抽選。であれば、相手の力が計算できる3回戦での休養策は自明だ。
春の屈辱を晴らし、3連覇を狙う彼らには、今日はそういう試合だったのだ。
3回途中までで6失点は少し大きいハンデだったが、田中投入でその後の計算はできる。

緒戦で完封を演じた青森山田の野田は、この日も立ち上がりから好調だった。
130k後半の直球がコースに決まり、追い込めば落差の大きいスライダーが来る。容易には打ち崩せない、かに見えた。
だが、2回に鷲矢のソロHRを 浴びると、様相が変わる。一発を恐れるあまり、内角を思うように使えない。
5回まで2失点に抑えたものの、いい当たりが正面に飛ぶ幸運もあった。
球数が増すごとにスライダーのキレが落ち、表情からも立ち上がりの精悍さが失われていった。

田中は、無難な投球を心がけていた。パスボールから失点した反省を踏まえ、低めの変化球での三振狙いは控えていた。
単打は浴びるものの、大量点は与えない投球だった。

6回。ついに駒苫打線が繋がり始める。この回に2点。7回に1点。じわりと忍び寄られるごとに、野田の球からは覇気が失われていった。

8回表。足を絡め、青森山田は貴重な追加点を奪う。
だが、田中は冷静さを失わない。決して慌てず、打たせて取るピッチングを続ける。
裏。2死からの連打。ついに同点。盗塁を刺し後続は絶ったが。野田は、まるで逆転されたかのように俯いた。
9回。それでも勝ち越した青森山田は、立派であった。野田も、中沢のHRを浴びた直後に4番本間を抑え、意地を見せた。
だが。その後の連打は防ぎようもなかった。
まるで最初からそのシナリオであったかのように。2人の投手が与えたハンデを、9回フルに使って打ち返してしまった。
そして。涼しい顔。
このチームの強さは、尋常ではない。
私は、3連覇を信じる。

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