2007-01-23

納豆問題のあれやこれ

「あるある」の「納豆問題」は、テレビ側が「捏造」があったことを認め、単独スポンサー花王の契約解除により、番組打ち切りで決着に向かうようだ。
(参考:http://hemohemo.web.infoseek.co.jp/category/aruaru/
何だか懐かしくなった。と同時に、何だか煮え切らないものも、私の中で燻っているようだ。

私がスーパーの青果担当だった頃から、「あるある」や「ガッテン」の類の効果は絶大だった。
ちなみに、テレビで紹介しても、全て売れるわけではない。ケースは限られている。

1.痩せる
2.血液サラサラ
3.お肌スベスベ

せいぜい、このぐらいだ。順はそのまま売れやすい順である。冷え性解消だの悪酔いしないだのでは動きは変わらない。
そして、普段あまり食べない、身近だが意識していないようなものだと威力が倍増する。

まるで時期外れに、サトイモが取り上げられたことがあった。
その時は、確か2の血液サラサラだったように記憶している。そして倍増要件も満たしていた。
たまたま週間テレビ欄でその情報を知った私は、金曜の段階で知る限りのツテ全てに電話をかけた。
土日のクソ忙しい合間を縫って、販促POPやサトイモを使ったレシピを用意した。
月曜の朝。売り場正面に現れた巨大なサトイモコーナーに、予想通りおばさんが大量に群がった。
普段一日の青果売上に占める割合がせいぜい0.5%のサトイモが、この日は単日25%を記録したのだ。
他の商品はいつも通り売れるし、更に他の店の品切れが続出したのだろう、昼過ぎからの客数押し上げ効果もかなりのもので、部門全体での売上は平日ベースの1.5倍にもなった。
他の店の品切れ。それはそうだろう。付近の市場の在庫はほぼ全て私が買い集めたのだから。
いつでも20ケースばかり在庫している、という想定で油断していた業者は切らして当たり前なのだ。
あくまで業者としての感覚だが。普段価格と品質を競っている敵が、そして敵で普段買い物する「敵の味方」である人が、困ったところで知ったこっちゃない。

今回、捏造が発覚する前に問題になったのは、大手チェーンスーパーだけが豊富に納豆を並べ、中小スーパーにはほとんど無い、という状況だった。
事前リークによるものではないのか?というわけだ。
しかし、その部分に言われるほど極端な悪があったのか、私には疑問だ。

納豆は、スーパーの商品カテゴリーで言うと「日配食品」になる。
豆腐や油揚げ、こんにゃく、生麺なんかと同じ分類だ。スーパーの売り場を思い出してもらいたい。大抵のスーパーでそういう商品と一緒に並んでいるものと思う。
このテの商品、特に日付の短さから毎日ほぼ等量売れる商品では、問屋との相対で毎日の基本入荷量が決められている。
大きなスーパーはそこに売れすぎた・余りすぎたに応じて修正を加えることが出来るが。
中小のスーパーは、扱い量の少なさ故、等量を止めるだとか増やすだとかは出来ない場合が多い。出来ても、当然のように大手優先になる。
今回のような「イレギュラー」には対応できないのだ。
全く何一つ物が入ってこない、なんてスーパーは、中小でもほとんど無いだろう。普段入っている分、相対契約分の量は来ているはずだ。
そこを疎かにしたら、契約違反だ。下手したら損害賠償で訴訟沙汰である。
そこにプラスする分が確保できていない、ということなのだろう。
情報の先後による有利不利があったとしても、今回は納豆業界で文書が回っていたと言うんだから、その流れに乗れるか乗れないかは企業努力の範囲の話ではないのか。
店をやる以上、お客が困らないようにするのは当然だ。
近所のスーパーで買えなくて困る、とかはそこのスーパーのみを問い詰めるべき、と思ってしまうのだ。
そういう市場原理がイヤなら、共産主義国に行くなり革命起こすなりしろよ、とすら思う。

で、番組内容は捏造だったわけだが。
当然、番組スタッフは責められるべきである。毎回思うが、やらせだの捏造だのに関わった人間は、二度と報道に関わらせるべきではない。
マスメディアが大きな権力となっている今は、尚更だ。
誤認とか推測を事実と履き違えたとかではないのだ。意図を持って騙しているのだから、広く大衆に呼びかける立場として許されることではない。
なのにクビという話は、いつも聞かない。
何も死ねというわけではない。他の仕事をしろというだけなのだから、それぐらいしなければならないと思うんだが。
社長の辞任とかは正直どうでもいい。ウソツキが報道関係者として残るほうが余程問題と思う。

捏造は、言われているような流通大手による情報操作だったのか。
それは、わからない。わからないからわかっていることで考えられる範囲だけ書くと。
普段の単日納豆売上10000円ぐらいのスーパー、商圏人口2万人・一日の客数2000人ぐらいと思うが、その店が売上5倍になったら50000円だ。
利益率が30%として、単純計算で12000円ほど利益が増えたことになる。廃棄ロス率が下がる分も合わせて、純利の伸びをわかりやすく15000円としよう。
この規模の店を500店抱える大手チェーンにしたら、全店計で750万円の利益UPということになる。利益率40%で売っていれば1000万円だ。
その売上が1週間続いたら。5000万円から、下手すると1億円クラスの収益がある、ということになる。
推測での印象操作は避けたいので、あとは各人で考えて頂きたい。

利用していた側として、またよく番組を見ていた者として、言うのは若干心苦しくはあるが。
一番情けないのは、テレビに簡単に釣られてしまう、消費者だ。
件の番組の「実験データ」と称するもの、特に食品に関するものは、およそデータと呼べるようなものではない。
10人かそこらの人間にとにかくこればかり食ってくれ、と言ったところで、被験者数が少なすぎる。
そもそもそれだけ食っているわけじゃないし、納豆なら納豆を食うことで食わなくなった食材だってあるだろう。
「何が」結果に影響を及ぼしたのか、の「何が」の部分が曖昧すぎるのだ。
なのに、最も効果の出た被験者だけを大きく取り上げ、「シンジラレナ~イ」と、こうだ。こういう話を聞く時は、真に受けてはいけない、という条件が揃った番組だった。
話半分に聞いておく、というのが、今の日本社会には出来ない。特にメディアには簡単に騙される。
大声で何か言う奴なんて、大抵はウソツキなんですよ。
 
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