2007-03-28

上から読んでも下から読んでも八百屋です。 ~21~

~17.売場の課題を探し出せ!青果売場の改装~
 
とかく忙しい青果担当の毎日を日々やり過ごしていると、いつの間にか売場には不備な点が溜まっていきます。
前に、毎日同じ売場ではいけない、ということには触れましたが、逆に毎日その日一番いい売場を作れるか、となると、毎日徹夜でもしない限り無理でしょう。
品揃えでしかない品目でも、それは担当者にとって品揃え品だ、というだけで、買っていくお客さんからすれば買いたいもの、必要なもの、おいしそうなものです。
その一品一品を一番良く見せる、買いやすくなる売場は絶対にどこかにあり、100円でも200円でも売上げを伸ばそうと思えば毎日の試行錯誤が必要になりますが、とてもそこまでは手が回りません。
ある程度の基準を設け、その基準を満たした範囲でおおまかにやる、あえて悪い言い方をすれば多少手を抜く、ということになります。
それを毎日繰り返していると、だんだんと歪みが蓄積していきます。盆や正月の大規模な売場変更の際に、売場全体である程度のリフレッシュはされますが、逆にそのイベントの在庫をいつまでも引きずった売場になってしまったりもします。
今時期の青果であれば、やたらと落花生が大陳されている店がよくあります。北海道では節分の豆まきに落花生を使うので、その時に予測を誤った在庫がまだ売り切れていなかったりするのです。
他部門なら、3月いっぱいは板チョコがやたらエンドに山積みだったり。夏場は溶けやすいから売れなくなる、最後の売り時、という事情もあるにはあるでしょうが。バレンタインの売れ残りが原因だったりもするものです。
 
店が変わっての2年目を順調な成績で経過し、年末もまずまずの成功を収めた私の野菜売場にとって、最後の課題はその部分でした。毎日綿密に計画を練る平台に比べ、レギュラーの売上げが悪すぎたのです。
前にアスパラの売上げについて書いた時に、売場全体での売上げ構成で言うと平台が8割、レギュラー2割だった、という話をしました。これは平均的なスーパーの基準から言えば、かなり平台に傾いた売上げ構成だと思います。
売り場面積を考える単位として、この業界では『』というものを使います。青果だけでなく他部門も含め、全ての什器が尺単位を基準に作られており、例えば「8尺の冷機」「6尺の平台」のように使われます。
尺は長さの単位なのに、面積の単位?という疑問をもたれるかも知れませんが。平台なら平台、多段ケースなら多段ケースそれぞれで、奥行きだとか高さだとか段数だとかはある程度決まってきます。幅だけどれだけ、と決まればそれで単位として通用するわけです。
その頃の私の野菜売場は、平台が通常の什器64尺、それの片脇につける什器が36尺、計100尺ありました。脇袖用の什器は奥行きのごく薄い平らなもので、おまけみたいなものだったので、通常什器の半分とみて、計82尺というのが私の解釈でした。レギュラーは4段の棚付き冷ケースで64尺、うち8尺は乾燥防止の蒸気が出る、葉物野菜の裸陳列用什器でした。
平台とレギュラーの売場尺比は82:64ですから、%に直せば約56%:44%です。それが売上げ比率で言うと80%:20%になってしまっていたのです。
さらにその売上げ比の左辺・右辺をそれぞれの尺数で割れば、尺あたりの売上げがどのぐらいかを考える基準の数字になります。左辺、つまり平台側は0.976。右辺、つまりレギュラー側は0.313です。平台とレギュラーの尺あたり売上げには、実に3倍以上もの差がついていたのです。
もちろん、島になっていてお客さんの目につきやすく、一品一品がたくさん積まれる平台は、壁にひっついてたくさんのモノがひしめいているレギュラーより売れやすいのは普通のことです。
それにしたって、せめて尺あたり売上げの差が2倍であれば、平台とレギュラーの売上げ比率は72%:28%ぐらいになります。もし平台の売上げが変わらないままでこの比率を実現できたなら、売場トータルの売上げは10%も伸びることになるのです。
これは明らかにレギュラーの売場を生かせていない、何とかせなならんな、というのはかなり早い時期に気付いていたのですが。毎日忙しいうちにズルズルと年を越してしまいました。
 
丁度その頃、老朽化が進んでいた私の店は、ン億円という金をかけて大規模な改装が行われる計画になっていました。私は下っ端でしたから、具体的な話を聞かされたのは年が明けてから、上のほうではよほど計画ができあがってからだったのですが。
売場コンサルタントの先生を呼んで作られたその計画でも、青果の売場効率は問題になっていました。とはいえ、私が一人で計算していたような平台とレギュラーの比率等は、どこに何を並べているかわからないお偉方だのコンサルだのにはわかるはずがありませんから、各部門別の売場面積ごとに、という大きな単位での話でしたが。
店全体の売上げに占める割合からも、平均的スーパーの業態からも、青果売場は広すぎる、縮めるべき、という結論になっていました。
渡された計画は。野菜部門で使う平台は通常什器48尺、その脇袖用に、片脇は階段状の底上げがついた立派な什器が18尺、いままで什器が無かった反対側にも、今まで使っていたおまけのようなものよりは奥行きのある什器が15尺、平台トータルで81尺。レギュラーはこれまでと同じタイプの多段冷機が56尺、うち葉物用蒸気付きが12尺、というものでした。
最初はオイオイ、と思いました。売り場面積は、基本的には売上げと正比例の関係にあります。縮んだら売れなくなっちゃうよ、という心配がまずありました。脇袖が立派になるとはいえ、通常什器の尺数と同じには考えられません。平台の通常什器が16尺に、レギュラーケースも8尺縮んでしまう。頭を抱えました。
でも、よくよく考えているうちに、私が個人的に考えていたレギュラー売場の効率の問題と繋がりました。
売場が広すぎるから、特に平台が広いから売れるものはどんどん平台に乗る形になり、結果スカスカになったレギュラーが動いていないのでは、と。レギュラーに魅力的な商品が無いからレギュラー全体の注目度そのものが下がり、結果品揃え品全体に弱い部分が出てきているのではないか、と。
そこに、この項最初に書いた手抜き問題が加われば、悪循環が加速するだろう、面積が縮まれば逆に管理は楽になるから、手抜きも起きにくくなる。これはひょっとしたら、一気に問題を解決するチャンスじゃないか?という方向に頭が向いていきました。
 
1ヵ月半ほど後に迫った開店まで、改装セールの企画・商品手配にも追われる中、私は売場の計画にかなりの時間を割いて頭を絞りました。
これまでのフェースを見直しながら、大きく縮んだ幅で売りを落とさない、むしろ伸ばす発想が必要になります。中心に考えたのは、利用性と嗜好性の問題です。
年中使うような極めて利用性の高い商品、それでいて嗜好性がそんなにはない商品。例えばキャベツ。レタス。白菜。長ネギ。大根。誰もが「野菜」と聞いて最初に思い浮かべるような商品たち。
これらは、私は基本的には平台に乗せていました。売れる量が多いので、レギュラーの陳列量では補充が大変だからです。
でも、よく考えると、これらを買うお客さんは、目的買いのお客さんが多いはずです。であれば、売場のどこにあろうと探すのではないか?そしてまた探すお客さんが多いから、レギュラーに置いたとすれば、その周りの棚に置いてある商品にも目が向きやすくなるのではないか?と私は考えました。
ただし、陳列量は確保しなければなりません。補充の問題もそうですが、きっちり面積をとって見つけやすくしてあげないとお客さんにストレスを与えます。
そこで、通常4段の冷機の中に、部分的に幅4尺ほど棚を外して3段のところを作り、その下段に上げ底をして、通常の下2段分をこれらの商品を並べる場所として設定しました。そうすることで、同じ高さで棚が並んでいる中に、部分的にギャップが出来ます。満タンに積めば、他の部分の上から3段目の棚より前までせり出してくるようなイメージです。
レギュラーの、均質な売場が続いていく中にギャップを作り、単品を目立たせる効果と、陳列量の確保。両方を満たすのが狙いでした。
もともと間延び気味になっていたレギュラーの品揃え品は思い切ってフェースを縮め、品目数は減らないようにしました。
そして、これまでもやっていたとはいえ、日々の繰り返しの中で怪しくなってきていたカテゴライズ陳列・関連陳列を再構築しました。
高い利用性でお客さんの視線をひきつけたそれら商品のまわりに、例えば大根であればおろしだれ等につきものの万能ネギを並べたり、レタスであればサラダにもう一味を加えるベビーリーフやハーブ類を並べたり。
主力品目が無い所も、煮物は煮物、薬味は薬味と、棚を縦に割るような発想で、関連性を追及していきました。
1品で最低4尺はとっていたそれら品目が抜けると、平台にもかなり余裕が出来ます。販促品を目一杯広げて売り、さらにそこに嗜好性に訴える、普段は品揃えの商材を絡ませていくことで、平台の売りも逃がさないように工夫しました。
そして、レギュラーに面する側の平台脇袖は、主力ではない商品、つまり利用性は低めでも嗜好性の高い商材を中心にするようにしました。
改装計画での青果売場のメインの『客導線』、つまりお客さんが一番多く歩く道は、レギュラーと平台の間でした。
そこにチラシ掲載のようなメイン商材を置いてしまうと、お客さんの利用性需要がそこで満たされてしまうのではないか、財布の限界の法則が発動してしまうのではないか、と考えたのです。
欲しいものだけでなく、買っても買わなくてもいいものを買ってもらわないと、財布の限界の壁は破れません。そして、買っても買わなくてもいいものは、見つけなければ絶対に買いません。だから、一番お客さんが見つけやすい所に嗜好性の高い商品を置く。それが最初の発想でした。
もうひとつ、そうすることで、レギュラーへの視線の動きも変わるのではないか、という目論みもありました。
買っても買わなくてもいい、ということは、裏返すとあまり興味の無いお客さんも相当数いる、少なくとも主力商材よりは多い、ということです。
そうしたお客さんは、どうするか。興味のないものから目を逸らすだろう。狙ったのは、そこです。
普通に平台の真ん中で目を逸らしても、そこからは平台の商品しか見えません。やっぱり主力品でしょうし、品目数も少なくなります。
そもそも平台のほうがレギュラーより目に付く可能性は高いのですから、その視線の動きが売りに繋がる期待はあまりできません。
でも、脇袖で目を逸らさせれば。レギュラーのほうに目が向く確率がより高くなります。そこにはたくさんの品目があります。
人それぞれで要る要らないが多い、要らない人のほうが多いからレギュラーに並んでいる品目ですが。そのたまたま目に止まった人の中に必ず、買う気は無かったけど大好き、あれば使う、という人もいるだろう、と考えたのです。
主力品をうまく組み込んで売場効率を改善する、レギュラーにお客さんの視線を向けさせる。嗜好性の高い品揃え品を中心に、売りのチャンスはあるけど逃してきた品目を強化し、全体の売りを上積みする、というコンセプトで、計画を作成していきました。
 
改装セールが大盛況のうちに終わり、その後1ヶ月ほど、客数がかなり押し上げられた状態が続きました。改装後の店に対するお客さんの声も大体好評なものだったようです。
店長は嬉しそうに、わざわざそれをまとめた資料を作って全職員に配りました。ピカピカで気持ちがいい。清潔感があるから新鮮そうに見える。広くなって買い回りがしやすくなった。そこに並んでいた声は、確かにどれも好意的なものでした。
店長はそれを見せながら、やっぱり改装してよかった、売りが伸びた、と自慢しました。
でもそれは、客数が伸びたことも含めあまりに当たり前すぎて、私には興味が持てませんでした。
客数が伸びた。それはそうでしょう。改装した店の目新しさで来るお客さんがいるからです。我々職員は、近所に新店や改装があれば必ず一度見に行きます。お客さんだって同じことでしょう。
お客さんが意識できるのは、コメントで残ったようなところまでです。でもそれは、改装すればどんな店でも当たり前に生まれる効果です。実際に店でいくら使ったのか、つまり肝心の「売り」に繋がったのかどうか、ということはお客さんは意識していません。いくらアンケートをとってもわからないのです。
客単価や持ち点も伸びていて、資料はそれにも触れていましたが。それらは目玉乱発による効果との見分けがつきにくい、参考にならない、と思っていました。
じゃあ私はちっとも満足していなかったのか、というと、そんなことはありませんでした。私は、全然別の尺度、私なりのコンセプトにそった売上げ分析で、改装後の売場に確かな手ごたえを感じていました。
平台とレギュラーの売上げ比率は想定以上、65%:35%あたりになっていました。
改装でより大きく売場が縮んだのはレギュラーのほうです。売場面積の比率で言えば、改装によってさらに平台寄りに傾いてもおかしくはなかったのですが。レギュラーの売る力が向上したのでしょう。
また、目玉品乱発の売上げ成果の陰に隠れて、週2000円以上売れる商品、というのが20品目ほど増えていました。
もちろん中には改装によって平台に乗って日の目を見た、という商品もありますが、さすがに20品もありません。平台に一度も出していないのに増えた分というのは、10%程度の客数増による効果よりも、売場変更によりレギュラーでも目に付いた、売れた、という効果のほうが多いように思います。
目先の数字でなく、より本質的な部分の方向が間違っていなかったことがわかり、より自信を持って売場計画が作れるようになりました。
また、これも目論見どおり、日中の売場管理もかなり楽になったので、倉庫整理などの売場外の作業も捗るようになり、早く帰れるようにもなりました。まさに改装バンバンザイでした。
 
店のお祭りムードは、長くは続きませんでした。2ヶ月ほど後に、某大手チェーンが小規模ながら近所に新店を出したのです。そもそも私の店の改装は、その新店対策の部分もありました。
客数は20%ほど、改装前のレベル以下まで急落しました。商圏人口は同じなのですから、食われた分だけ客数は減ります。いきなりほぼ全部門が前年割れになり、店全体が暗いムードになりました。
しかし、唯一野菜だけは、前年を確保し続けていました。客数が減った分を、売場効率改善による客単価の伸びが上回ったのです。
また、私の品目拡大路線もこの場合功を奏したようです。その新店には置いていない商品が、私の売場には豊富にありました。顔馴染のお客さんにも、やっぱりココじゃないと用が足せない、という声をかけていただきました。
 
私の場合は運良く改装というきっかけがあったので、まとめて課題を解決することが出来ましたが。こうした機会を作ることは担当者の一存で出来るはずもなく、日々の中でやろうにも忙しく、伸ばし伸ばしになってしまうことが多いと思います。
ただ、根底の部分の方向性を定めてしまえば、あとはそれに乗っていけばいいわけで。そんなに大変なことでは無くなります。最初は面倒ですが、後は楽になるのです。
毎日の中での歪みはいつか必ず根底の部分にまで及んできます。それを感じた時には、一度リセットするぐらいの気持ちで売場を見直さなければならないのではないか、と思います。

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