2007-09-13

上から読んでも下から読んでも八百屋です。 ~31~

~特別シリーズ・信頼できる野菜・できない野菜 その6~
 
・単品別鮮度・品質チェックポイント 玉ねぎ編
 
玉ねぎというのは、地方によってかなり需要量に差がある野菜だそうで。私の住んでいる北海道はその最大の生産地ということもあって、売上げ順位もベスト5には確実に入ってきますが、ひょっとしたらこの順位に違和感がある地方もあるかもしれません。
北海道の人は、とにかく玉ねぎが好きです。他の地方では長ねぎを使うのが一般的な料理でもかなりの割合で玉ねぎを使います。牛丼も玉ねぎ、すき焼きも玉ねぎ、チャーハンも玉ねぎ、味噌汁の具にもすれば焼き鳥の間に挟まってたりもします。
野菜の商品別売上げというのは、地方によってかなり違いがあります。気候の差による嗜好も違えば名物料理や特産品によっても違います。文化が違うのですから、当然買うものも違ってくるのです。
さらに細かく見れば、10~20kmぐらいしか離れていない単店どうしでもまるっきり売上げが違う商品、というのも少なからずあります。
例えばどこかに主婦に大人気の料理教室なんかがあって、そこで習った料理に使うためにガバッと売れた、その後も順調に売れるようになった、というようなこともよくあるわけです。
何が言いたいかというと。最近増えてきた「全店的な売場展開統一の動き」に異議を唱えたいのです。
某最大手コンビニチェーンと、同じ資本系列グループのスーパーの成功例がきっかけとなって、今大手チェーンはどこも売場展開を指導するバイヤーやら何やらの肩書きの人が全店的テーマを作り、それに沿った売場を作るよう個店別に指導していく、という手法を標榜しています。
そして、「どこの店はこれがどれだけ売れている、これは全店の平均でこれぐらい売れている」というような比較情報をもとに、売れていない店には単品別で展開上の指導が入るのです。
それじゃあ、本当に一番売れる売場は作れないのにな、と。私は思っています。
各店別の商品の動向は、非常に細かいところまで見ればまさに千差万別です。先述したように、その原因は担当者の売り方によるものだけではありません。各店ごとに違って当たり前の部分が確実にあるのです。
一人一人のお客さんが、売場へ来て、今晩の晩御飯何にしようかな、だとか、今冷蔵庫にはあれが無かったわね、だとか、いろいろ考えながら買物をしています。何かが尋常でなく売れる店、というのは、それに繋がって売れているもの・いないものも必ずあるのです。
それを全て把握するのは誰にも出来ないことでしょうが、少なくとも本部に座っている人間よりは、毎日品物を並べている担当者のほうがその感覚を掴みやすいはず、と私は思います。実際に私の店が他店より売れていた原因は、大抵他店より圧倒的に売れたものに押し上げられたところにあったのです。
それを掴める能力、掴もうとするやる気のある担当者が少ないからこそ、全店で均してしまう方法が有用なものとされているのでしょうが。だからといって「こうしなさい」「わかりました」だけになる部分を広げてしまえば、余計に担当者のやりがい・責任意識を削いでいくように思います。
何よりも、目の前にいるお客さんが欲しがっているものより、全体で欲しがるお客さんが多いものを押し付けるかのようなやり方、個人的嗜好より多数決重視みたいなやり方が、人によって好き嫌いの激しい食品を扱う部門でいい結果を生むはずがない、と思うのです。
お客さんの立場としても、どうですか?何だかいつも人と同じものを買ってしまっている気がする店と。自分や家族の好きなものがふんだんに並んでいる店と。どちらがいいですか?
 
さて。また随分脱線しましたが、今回は半ばわざとでもあります。
玉ねぎというのは、野菜の中でも最も保存が利く商品です。春先から初夏にかけて出回る柔らかくてひらべったくて黄色っぽい「新玉ねぎ」を除けば、放っておいても1ヶ月ぐらい平気で保つのが当たり前の商品です。だから、あんまり書くことが無いのです。
家では保つからこそ逆に油断して「知らないうちに腐ってた」とかがよくある商品ですが。長くても1週間や2週間で在庫を回している店では、まずダメなものには出会わないでしょう。
逆に、玉ねぎですら腐らせている・芽の出たまま並べている店、というのは、相当の店です。どうしてもそんな店しか近所に無い、という人には、気の毒ですが「どんな野菜を買うにも慎重に」と言うしかありません。
どんなものがダメか、と、わからない人がいたら困るので念のため書いておきますと。ものすごく誰でもわかる基準として、芽や根が出ている玉ねぎはダメです。それらを伸ばすために玉の中の栄養を消費しているからです。あとは腐っていないかよく見ればいい、というだけです。
他に一つだけ、玉ねぎを選ぶ場合覚えておいたほうがいいのは、玉ねぎの味は生産者によって全然違う、ということです。畑の土壌の成分や肥料の使い方が影響するのか、「えっ、こんなに?」というぐらい違います。
もちろんどんな野菜でも生産者による味の違いはあるのですが、玉ねぎの場合見てくれだけでは違いがわからないので(もちろん私の力量では、という話で、わかる人にはわかるんでしょうが)より生産者という「名前」が大事なのです。農協選果で特に生産者名の書かれていない玉ねぎでも、箱には必ず生産者番号が入っているのですが。番号別で食べ比べても結構差があったりします。
最近の北海道のチェーンスーパーは、その特徴を知っているので皆「○○さんちの玉ねぎ」というような生産者ブランド商品を扱っています。一度、そういうものと普通に安く売っているものを比べてみて下さい。違いがよくわかると思います。
見た目でおいしいものを選べない私がそれに気付いたのも、食べたからです。正確に言うと、一時期玉ねぎが入ってくる度にバックヤードで生のまんまかじっていたからです。
どんなに「いい」と言って入ってきたものでも食べてみなきゃわからんだろう、でも調理するのはめんどくさい。ということで、私はたいていの入荷品をみんな生のままかじってました。生で食べたら体に悪いと言われるほうれん草やじゃがいもも、多少ならなんてこと無いだろうと思ってかじってました。
青果の担当者というのは、お客さんから見えないところでそんな努力もしているものなのです。もっとも、まともな担当者はちゃんと火を通すものには通して食べているでしょうが・・・
 
いよいよ書くことが無くなったので、玉ねぎのマメ知識がたくさん書いてあるページを紹介して終わりにしたいと思います。
北海道の野菜というととかくとうきびやじゃがいもばかり言われますが。昼夜の寒暖差が大きく夏の日照時間が長い北海道は、玉ねぎの栽培にもいい気候なんですよ。生食だとカラすぎるぐらいのものが取れるので、加熱するとその辛味がみんな甘みに変わって、絶品です。
飴色玉ねぎでおいしいカレーを、なんて時は是非北海道の玉ねぎを使ってみて下さい。
 
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