2007-09-12

上から読んでも下から読んでも八百屋です。 ~30~

~特別シリーズ・信頼できる野菜・できない野菜 その5~
 
・単品別鮮度・品質チェックポイント キャベツ・レタス・白菜編
 
今回は、3種類をまとめて書いてみたいと思います。
 
ろくに家事の手伝いをしないような男子中高生だと、どれがどれだかわからなかったりするこの3種。
まさかそんなレベルの人は担当者にはならないだろう、とお思いでしょうが。
いるんです。相当の割合で。今40代ぐらいの担当者に聞いたら、「入ったときは知らなかった」という担当者が半分近くいるんじゃないか、という気すらします。
多くのスーパーの場合、新人採用は一括採用して適当に部門割り振って終わりでした。仕事の中身の専門性に対し、あまりに新人の知識量や興味や好みというものを軽視しすぎている嫌いがありました。私は中途で「青果担当」という募集に応募しましたが、それですら野菜のことやなんかは何一つ聞かれませんでした。
今はベジタブル&フルーツマイスターとかいう怪しげな資格も出来ましたし、徐々にその専門性・知識の特殊性が認められつつある青果担当の仕事ですが。スーパーという効率重視の権化みたいな組織の中では「誰がやっても同じもの」という駒扱いをされた時代が長かったのです。
そのなかで、日々の売場管理を通じひとつひとつ知識を身につけ、厳しい競争を生き残ってきたベテランの担当者さんは、皆さんナントカマイスターとは比べ物にならない知識量を持っています。紙の試験では問題にしようがないことがこの世界にはたくさんあるのです。
野菜に詳しい人、というと、とかく生産者やら市場の人やらばかり注目される風潮があるように感じますが。スーパーの担当者がそれらの人に負けるとは思えません。何せ場数が違います。ものすごく少なく見積もって、一日2000点を年間300日、20年としたら、触った青果物の数は12000000個(1200万個)ですから。この数を一品一品見る仕事、それも多品目に渡って見る仕事なんて、他には無いんじゃないでしょうか?
もう少し、評価されてもいいんではないかという気がしてしまいます。
 
3種の野菜の話から随分脱線しましたが。
生食中心のレタス、千切りや炒め物・洋風煮物のキャベツ、鍋や漬物の白菜と、まるっきり用途が違う3種を並べたのは、男子中高生が間違うから、というだけの理由ではありません。その鮮度の見分け方にも、非常に似通った部分があるのです。
トマト・きゅうりでもそうでしたが、野菜で一番弱いのは切り口の部分です。
小学校の理科を思い出してください。植物の細胞は全て「細胞壁」と呼ばれる固いカラに入っていて、細胞膜しかない動物より強い、って習いましたよね?
でも、レタスやキャベツ・白菜では、その玉を切り離しています。そうすると、断面の細胞は細胞壁も何もない無防備な状態になり、死にます。そしてそこから徐々に腐り、維管束を通じて総身に行き渡るわけです。
今時期は新鮮な朝採りレタスが並んでいる店も多いと思いますが。それをひっくり返して切り口を見てみて下さい。新鮮なものは真っ白です。それがだんだん茶色けてきて、あのレタス独特の溶けるような気持ち悪い腐り方になっていくわけです。
これは、あまりにもわかりやすいので、店でも放置しません。茶色くなってきたら、おしりを切って白い面を出します。ここを除けば腐る危険性を減らせるわけですから、見た目だけでなく保鮮上も必要な作業です。
ただ、それを何度も繰り返せば外のほうの葉も落ちますから、緑みの強い葉が減り、白っぽい玉になります。鮮度を見分けるポイントは、ここにもあります。
もう一つ、レタスも非常に乾燥しやすい野菜です。裸売りしていると、売場で表面がシナシナしてきます。一枚むけば変わらない、とも言えますが、どうせなら売場に長く並んだものは避けたいですよね。
これらをまとめて売場を見たときの順で言うと、
1.緑みが濃い
2.おしりの切り口が白い
3.外側の葉っぱのしなやかさ
の順で選んでいけば、いいものにあたるわけです。
もう少し寒くなってくると、レタスは産地でセロ巻きされたハウス栽培の流通モノが中心になってきます。これらはちょっと経てば切り口が真っ黒になってきますし、店でもあまりセロを破ってまで手直しはしなくなりますから、より切り口の色が重要になります。
同じように裸売りが多いキャベツにも、先程とほぼ同じ基準が適用できます。切り口の変色スピードはレタスよりかなり遅いのですが、並べて比べてみるとわかりやすくなります。
また、外側のヒラヒラ開いた葉っぱはすぐ乾燥します。乾いたらすぐ落ちますし、店でむいてしまう場合もあります。これがついていてかつしなやかなものは新鮮なものでしょう。逆に、真っ白になっている玉は相当むいている、ということで、よろしくありません。
ちなみに、一般に出回っているキャベツの品種には、大きく分けて3種類あります。横から見ると楕円形でで、外の葉っぱがふわふわした「サワーキャベツ」と、キューピーちゃんの頭のように丸のてっぺんがとがった形をした「グリーンボールキャベツ」、そして冬場の中心になる、平べったくてがっちりと固い「寒玉キャベツ」です。
サワーは柔らかく焼き物や炒め物・生食向きで、煮るとほつれてきます。グリーンボールはシャッキリとして葉に厚みがあり、浅漬なんかに向いていますが割とオールマイティです。寒玉はしっかりと固く崩れにくいので、じっくり煮る料理やお好み焼きなんかに向いています。
表示している店・していない店がありますが、見ればすぐわかります。用途に合ったものを買ってもらう、もしくはモノにあった料理で使ってもらうと、よりおいしく食べられます。
白菜の場合は、玉売りよりも1/2・1/4などのカットしたものが多いと思います。これらも、切り口から劣化していきますので、よく色を見極めて下さい。採ってから日にちが経っているものほど切り口の色づきが早くなります。
また、白菜は芯が黄色くなっているものが多く、この黄色が濃いほどおいしいのですが。カットしてその部分に光が当たると徐々に緑色になっていきます。光合成を始めようと、葉緑素が作られるのです。この葉緑素に変わってしまったものが白菜の甘みを感じる成分ですから、できるだけ黄色いままのものを選んで下さい。
この変化は、カットしたレタスやキャベツでも起きます。キャベツは白い部分が緑になります。レタスはもとが結構緑に色づいているのでわかりにくいのですが、切ったばかりのものと比べるとやはり違います。自宅で切ったものの色の印象を持っていれば、多少わかりやすいかもしれません。
もう一つ。これらを買うときに、よく二つ手に乗せて重さを比べている人を見かけます。
レタスは、一般には軽いものがいいとされています。生食のサクッとシャキシャキした軽い食感が大事だからでしょう。キャベツや白菜は逆に、重いものがいいとされます。軽いものは身がブカブカして締りが無いからでしょう。
食感の問題のみと思われがちですが、重さは食味にも影響があります。これらの「重さ」を決めているのは、全て水分です。生食のレタスの場合、水分が少ないほうが味が濃く感じられます。キャベツや白菜は加熱調理が中心です。「味を吸う」という意味では、水分が多いほうがいいでしょう。キャベツを千切りする場合も、瑞々しく柔らかいのは重いキャベツです。
 
これら3種は、需要で言うと『利用性』の面が強い野菜です。(この記事参照)どれでもいいや、と何気なく掴んでしまったり、とにかく安いものを、とばかり考えてしまうことも多いのではないか、という気がします。
そこに付け込んで、なのか、店によってはとんでもないものを平気で並べていたりもします。出回り量が豊富ですから、市場では意外とピンからキリまであり、いくらでも安いものが見つかる商材なのです。
だから、この3種は結構店の見極めにも役立ちます。どれもひどいものしかなければ、いくら安くてもおいしいものは何も売っていない店だと思います。多少高くてもこだわりを持ってしっかりとしたものを並べている店は、信頼のおける店です。安くてしっかりしたものなら当然もっといいわけで、そんな店がもし見つかったら青果は毎回そこで買ってもいいぐらいです。
どれでもいいや、では気付きません。せっかく買うんですから、おいしそうなものを選んでみて下さい。
 
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