参議院議員選挙に寄せて
参議院議員選挙にご出馬の先生方。雨の中、こんな田舎町まで遠路はるばるのご遊説、大変ご苦労様です。
私のように頭の悪い者には、なんべん伺っても先生方のお名前なんて頭の片隅にも残らないのですが。
そんな私のような者のためなのか、お名前だけを繰り返し繰り返し。何度でも大きなお声で仰って下さる。
しかし頭の悪さというのは如何ともし難いもののようで。やっぱりなんべん伺ってもさっぱり、お名前の一部すら思い出せないのです。
どうか、お声を枯らされてはお気の毒ですから。そのように、私のような頭の悪い者のことは考えず、もっと効果のあるやり方でもって運動を進めて頂ければな、と思うんです。
もっと効果のあるやり方。ええ、私には腹案があるのです。
組織票?馬鹿いっちゃいけません。自民でも民主でも大した差がない、自分の仕事の大勢には影響ないことぐらいは、私のような頭の悪い者でもわかってますよ。
組織票なんて、アテにできるのは公務員ぐらいです。それも自衛官とか国土交通省とか地方自治体とか、利害のはっきりする人達だけです。
頭の悪い私は、先生が与党だったか野党だったかもさっぱり忘れちゃいましたけど。野党だったらそれすらアテにしようがないですしね。
私の腹案は、そんなところにはないんです。
「無党派層」なんてカッコよく呼ばれちゃってる、私のように頭の悪い「大衆」をだまくらかす方法。それが私の腹案なんです。
だまくらかす、なんて人聞きが悪い?よく言いますよ。公約なんてロクに守ろうともしないくせに。
いや、責めてるわけじゃありませんよ。実際に責任ある立場に置かれたら、そんな昔の約束より今の判断が優先ですよね。
だから、先生のご高邁なご思想に基づいたお優秀なご思索によるご判断を頂くためには、まずは国政の場に立って頂かなくてはならない。そのためにちょっと騙すぐらい、どうだっていうんです?
騙したっていいんですよ。結局の結果がいいように、よくなくたって過不足なく無難にやればそれでみんな文句は言いません。
まずは、受からないといけませんよ。
さて。本題の私の腹案です。
まず、広くよく状況が見えてしまう先生方には、世の中いいと思ったことにも悪い面もあることをよくご存じと思いますが。
それを表に出しちゃあ、絶対にいけません。
だって、私のような頭の悪い者から見たら、悪いところばかり目立って見えてしまいますから。
事務所経費ごまかしただとか、原爆とかしょうがないだとか、女性が子供を生む機械だとしたら生産する台数は決まってるから一台当たりの生産力を上げよう、だとか言われたら、そのマイナス面ばかり気になって、先生方が仰るようなその方の優秀な仕事ぶりなんてどうでもよくなっちゃうんです。
だからって、「優秀な仕事ぶり」のほうがわかるように、と一生懸命ご説明頂いても、私のような頭の悪い者には何やらさっぱりです。教育再生だとか戦後レジームだとか美しい国だとか言われても、さっぱり自分のこととして実感できません。
地球温暖化ですら、どうすればいいかよくわからなくてとりあえずペットボトルを丁寧に温水と洗剤で洗ってリサイクルごみに出したりしちゃうんですから。温水で洗うのに使う燃料も水も洗剤も、ごみステーションから車で運ぶ燃料だって地球温暖化にはマイナス、トータルしたらリサイクルしないほうがいいぐらい、なんてことは私のような頭の悪い者にはさっぱりわからないんですから。
それじゃあすごく実感できる問題、例えば年金問題を言えばいいのか、といえば、それも間違いです。あんまりにも実感が出来すぎる、痛いぐらい実感出来ちゃうからです。
みんなからお金を集めて、少しは運用したりして増やして、年取ったら生活に困らないように返す。年金は、あんまりにも仕組みが単純です。
どうするか、今の一時的な未払いだけでなく将来的な資金不足を解消するには、どうするか。
って考えると、みんな気付いちゃうんです。集めるお金を増やす、つまり税金を上げるか、払うお金を減らす、つまり毎月の支給額を減らすか支給開始年齢の引き上げか。どっちかしかないってことに。
そんな問題で下手に何か言えば、すぐに悪い面に気付いちゃう人が出ます。そうしたら、悪い面ばかりが気になっちゃうの法則発動、つまりマイナスにしかならないんですよ。
じゃあ、何を言えばいいか。それが私の腹案です。よーく聞いて下さいね。
ちょっと聞くとどうでもよさそう、でもまるで自分の生活と無関係とは言えない、それぐらいのことを、推進でも廃止でも何でもいいからとにかくズバリと言い切っちゃえばいいんです。
みなさんの大先輩に、それで大成功しちゃった人がいるじゃないですか。
「自民党をぶっ壊す」って言われたって、おおかたの人にはろくに関わりがないことです。自民党員なんて名前だけの人が多いですから。ぶっ壊したければご勝手に、ぐらいの話なんです。
でも、「自民党」が政治とカネとかでちょっとマズそうなこと、それでいて自民党以外に任せるとろくなことにならないことには、みんな気がついていました。平成の乱だとか言われた野党ごったまぜ連立政権の頃のぐだぐだぶりを、みんな見てましたから。
そこをうまくついた人は、ろくな政策もないまま「感動した!」とか言ってるうちに国民的支持を集めちゃいましたよね?
ズバリ言ったからです。そして、ズバリ言われて困る人が、みんなの身近にあまりいなかったからです。年金問題でズバリ「増税して解決します!」とか言っちゃうのとはわけが違ったんですね。
その人の人気がどうやら陰ってきて、どうするか、と思ってたら。やっぱり流石でしたね。「郵政民営化」ですもの。
郵政が民営か国営かなんて、おおかたの市民には関係ないんです。NTTや電力各社が民営なのがどうでもいいように。JRは廃線が増えて困った人も結構いそうですけど、それですら国営か民営かが問題だなんて、誰も考えやしないんですから。
でもそれを、国の一大事ででもあるかのように、大げさに大げさに言いきっちゃえば、300議席の大勝利に繋がっちゃうんです。すごいもんですよ。
で、2年経って。だいぶ民営化路線で話が進んできたみたいですけど、何の話題にもならないんですから、ビックリしちゃうでしょ?反対した人の復党がどうのこうの、そんな問題の本質と関係ないことしか話題にならないんですから。地方の簡易郵便局をどうするかだとか、今の方針がどうなってるかなんて知ってる人、話す人、私の周りには一人もいやしませんよ。
でもそれが、やるぞ!やるぞ!と言われてるうちに、ものすごい大問題だったような気がして。みんな投票した。うまいことだまくらかしたわけです。
みんなね、ズバリ言って欲しいんですよ。私と一緒で頭が悪いから。考えるのが面倒なんです。
でも、本当に困る問題だとズバリ言われちゃ困ることがあるのがわかるから、どうでもよさそうなことをズバリ言われたほうが、ありがたい。そうだそうだ!と言いやすいことが欲しいんです。
だからね、被害者も出てない期限切れ商品の話を「廃業してもらいたいッ!」とか血相変えちゃうみのもんたさんだとか、芸能人に好き勝手に「地獄に堕ちるわよ!」とか言っちゃう細木数子さんだとか、とりあえず何にでも反対しとけみたいにしか見えない田原総一郎さんだとか、ああいう私と同じように頭の悪い人でもズバリ言い続けてれば人気者になれちゃうんです。
とにかくズバリ言ってればいいんです。ズバリ言われれば、考えなくて済む。みんな考えたくないんです。
考えたら、面倒なことがたくさんあることに気付いてしまいますからね。
まあ、そういうわけで。いよいよ投票まであと一週間になりましたけど。
とりあえず最後の土曜の、あの「最後のお願いに参りました!」っていうの。あれだけは勘弁して下さいね。
いくらお願いされても、頭の悪い私には先生のお名前は覚えられないし。なんだか誰でもいいような気がしてきちゃうだけですから。
もっとも、私は頭が悪いんで。最初から誰でもいいなあと思いながら眺めてるだけなんですけどね。
No comments:
Post a Comment